犯罪利用口座凍結の実務

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(愛知県弁護士会民事介入暴力対策特別委員会 弁護士 青葉 憲一 氏 )

はじめに

昨年8月号に「暴力団と詐欺」・本年3月号に「振り込め詐欺にひっかからないために」という話題が取り上げられているように、詐欺が暴力団の重要な資金源となっていることは、周知の事実です。

そこで、今回は、犯罪利用口座を使えなくすることによって、被害回復をはかるとともに、暴力団の資金源を断つ手段となる「振り込め詐欺救済法」に関して説明します。

振り込め詐欺救済法とは

正式名称を犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律といいます。

この法律は金融機関に対し、振込め詐欺等の犯罪行為に利用された疑いのある預貯金口座について、できるだけ迅速に取引の停止等の措置を講じるよう求めるとともに、簡易・迅速に被害者の財産的被害を回復するため、預金等の債権を消滅させ、これを原資として被害者に被害回復分配金を支払う手続を定めた法律です。

振り込め詐欺救済法の概要

(1) 取引停止措置(口座凍結) 同法3条

金融機関が取引停止措置を講ずるためには、「犯罪利用口座等である疑いがある」と認められれば足り、犯罪利用預金口座等であるという確証は要件とされていません。そればかりか、犯罪利用預金口座等であることを「疑うに足りる相当な理由」も必要とされていません。

そのため、非常に簡易・迅速に口座凍結を行えることになります。そして、口座凍結の主体が裁判所や執行官といった公的機関ではなく、あくまで民間の金融機関であるところに特色があります。

(2) 預金等債権消滅手続(失権手続) 同法4~7条

金融機関は、犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があると認めた場合には、さらに、当該預貯金債権の消滅手続に入ることになります。

注意事項

(1) 口座凍結の対象となる犯罪類型の限定

口座凍結の対象となる犯罪は、詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法として、その被害を受けた者から、預金口座等への振込みが利用されたもの(同法2条3項)に限られます。つまり、あらゆる犯罪が口座凍結の対象となるわけではありません。

具体的には,オレオレ詐欺(特殊詐欺)・融資保証金詐欺・架空請求詐欺・還付金詐欺・利殖商法詐欺・恐喝・ヤミ金などが対象となります。

これに対して、大麻取締法・覚せい剤取締法違反の収益、さらに、単なるマルチ商法や貸金業規制法違反も、残念ながら口座凍結の対象とはなりません。

なぜ、口座凍結の対象が限定されているのかというと、本来、口座凍結自体が目的なのではなく、民間会社である金融機関を主体として、財産を侵害された被害者の被害回復を図るために制定された法律だからです。そのため,適用される場面が人の財産を害する罪の犯罪行為に限定されているのです。

(2) 民事訴訟法や民事執行法に基づく手続きの優先

振り込め詐欺救済法による口座凍結は、「疑わしきは凍結する」という、極めて簡易・迅速な手続きです。したがって、凍結自体は容易である一方で、裁判所を介した法的手
続きが優先することになっています。

警察等の対応

以上のように振り込め詐欺救済法の適用には一定の制限があります。しかし、警察は口座凍結に関して非常に積極的に対応しており、金融機関に口座凍結要請を行ってくれ
ています。

もちろん、我々弁護士も、少しでも多くの被害救済ができるように、金融機関と協力をしています。ですから、みなさんも振り込め詐欺等の疑いがある取引を発見した時には躊躇することなく、警察・県民会議(暴力追放センター)・弁護士に相談をして、被害回復を図るとともに、暴力団の資金根絶にご協力ください。