(愛知県弁護士会 民事介入暴力対策特別委員会 弁護士 土井 竹美 氏 )
はじめに
愛知県内のえせ同和行為の相談状況については、過去数年減少傾向にあったのであるが、平成26年、愛知県警察本部(前年4件→11件)、愛知県(前年1件→7件)、名古屋市(前年0件→6件)とも増加している
但し、愛知県・名古屋市は平成26年度。一方、名古屋法務局は平成24年度1件、平成25年度8件、平成26年度は1件に減少。
なお、件数については、えせ同和行為の場合、不当要求の額が相対的に低い場合が多く、断るとあっさり引くケースも多いことから、相談にまで至っていないケースも多々あると考えられている。
そこで、改めて注意喚起という意味も込めて、本稿では「えせ同和行為の対策」を記載する。
えせ同和行為とは
えせ同和行為とは、「同和問題は怖い問題である」という誤った意識に乗じ、同和問題を口実にして、企業・個人や行政機関等に不当な利益や義務のないことを求める行為をいう。
(平成26年法務省人権擁護局「えせ同和行為対応の手引き」)
不当な要求の内容
一般的には、機関紙・図書等購入の強要、寄付金・賛助金の強要、講演会・研修会への参加強要、下請への参加強要、広告掲載の強要、物品等の寄付強要、契約や融資の強要、債務免除・猶予の強要、示談金の要求などである。この中でも依然として機関紙・図書等物品購入の強要の割合が高い。
(平成25年中におけるえせ同和行為実態把握のためのアンケート調査結果概要)
一方、最近の愛知県内においては、同和をかたりDVD、会報、寄付等を不当に要求する事例が挙がっている。
対策
前提
不当要求行為者の武器は誤った認識、恐怖心等であることを心得ること。
⇒ 脅しを恐れず、誤った認識、恐怖心を捨て不当要求は断固拒否に徹する。
対策の基本
- 不当要求に対する組織内マニュアルの作成
- 対応
対応責任者や内部の連絡体制を整備し、必要な範囲内で情報を共有化し、組織として統一的な対応を行うこと。
- 直接的な対応は、基本的には2名(話を聞く人、記録を残す人等)。
- 相手方のコントロール下にある場所へは赴かない。
その他の注意点
- 不当要求行為者を特定する。
- 記録(録音等含む)を残すこと。
- 言動には注意を要するものの、社会儀礼及び社会常識の範囲内の対応
であれば問題は大きくならないので必要以上に過敏にならないこと。
- DVD等が送りつけられてきた場合、開封前に着払いで返送すること。
相手方受領拒否の場合は、内容証明郵便等で通知をする方法もある。
相談窓口の利用
えせ同和行為被害者相談窓口としては以下の①~⑦を参照のこと。
- 名古屋法務局人権擁護部えせ同和行為相談
電話:052-952-8111 - 愛知県警察本部住民コーナー
電話:052-953-9110 - 愛知県警察本部暴力相談センター
電話:052-951-7700 - 愛知県県民生活部県民総務課人権推進室
電話:052-954-6167 - 名古屋市市民経済局人権施策推進室
電話:052-972-2582 - 公益財団法人愛知県暴力追放運動推進センター
電話:052-883-3110 - 愛知県弁護士会名古屋法律相談センター民暴相談
電話:052-565-6110(有料)
法的手続きの利用
- 弁護士による介入:内容証明郵便
- 仮処分申立て(架電禁止・面談強要禁止・訪問禁止etc.)
- 民事調停・訴訟の提起(債務不存在確認請求etc.)
- 刑事告訴・刑事告発・被害届の提出etc.
終わりに
以上のとおり、結局のところ、相手方は、対象者の誤った認識、恐怖心等につけこんで不当な要求を行うという点にポイントがある。
こちら側としては恐怖心等を捨て、第三者に早期に相談・報告、適切な対応をするなどして、不当な要求は断固拒否する姿勢で臨めば問題はありません。